北海道の開拓②浦臼町編其の壱
明治32年に浦臼村は月形村から分かれました。その月形も樺戸集治監の用地でした。懲役10年以上の囚人を遠くの島へという国の方針により、北海道にも集冶監ができ、その一つが樺戸集冶監です。
北海道開拓の大きな三本柱は、移住民、屯田兵、監獄です。
<監獄囚徒による開拓>
<月形潔の像>
集冶監選定の命を受けた月形潔ら一行は、明治13年横浜を出航し、樺戸に決めました。地理的にも便利で、内務省が予定している11000人の集徒を収容するのに良いと考えたからです。
北海道は夏が短いから、伐木開墾は雪のある3月から取り掛かります。獄舎も官舎も建設前であったが、小菅監獄から重罪囚人40人をシベツブトに押送させ開墾させました。官舎が出来るまで囚徒と同じ部屋で寝起きしていた月形潔は打ち合わせに上京すると、土産を買って囚徒にも分けてやりました。村名を月形潔の名を取り「月形」とし、内務省からの許可が下りました。明治14年樺戸集冶監が開庁。月形潔が初代典獄(所長)になりました。
潔は開墾した農地は、移住してくる入植者に払い下げたり、刑期を終えたり、仮出所の囚徒に与えていましたが、明治18年、2代目の典獄は方針を変え、遠隔地の使役をすることに改め、翌年北海道庁が置かれて初代長官になった岩村通俊も拓殖事業に囚徒を使うことに力を入れたため、他の集冶監も習うようになり、一番過酷な場所を囚徒が受け持つようになりました。後年、鎖に繋がれたまま、手錠をかけられたままの白骨死体が多数発見されました。
<樺戸集冶監>
釧路集冶監の囚徒は硫黄採掘に使役されていました。この硫黄山で2ヶ月も働いていると慢性腸カタルになって食欲が衰え体力が衰えていきます。硫黄の粉末で目を痛め、失明する人も居ました。亜硫酸ガスの中毒で囚徒や看守の中には精神錯乱した人がいて、身の毛もよだつ殺人が行われていました。
今の主要道路は囚徒が開きました。沼や川では寒い中、腰まで水に浸かっての道路工事や橋建設は囚徒は涙をこぼしました。集冶監ごとの競争があり、民間に委託すれば3万円以上かかる工事が囚徒使い捨てという訳で2千円で済んだ道路があります。絶えず追い立てられ、手を休むと怒鳴られ、殴られる。日が暮れても工事が予定どうりに行かないとたきぎを炊いて働かされました。囚徒の疲労は増してきて、体を休めるはずの泊込所は話にならないくらいの粗末な物です。飲み水や食料が滞りがちになります。3食の内2食は、たくあんや味噌だけがおかずです。遠隔地の工事をしているために、開墾した畑の管理が出来なくなり、樺戸集冶監は畑を北越殖民社や個人に払い下げました。
<囚徒の出入りで磨り減った石段>
<北越殖民社>
明治19年、越後長岡の大橋一蔵を中心に創立され現在の江別市に本社を置いた会社形態の農場です。北海道土地払下規則、国有未開地処分法、無償貸付付与の拓殖政策を背景として発展しました。明治27年、現在の浦臼町晩生内(おそきない)に関矢才五郎を管理人として事務所を設け、15戸の越後移住者で始まりましたが、昭和10~11年に自作農へ解放され、農地改革時にはほとんど社有地はありませんでした。
<聖園農場>
「食えぬ民権」から「食える民権」への模索を考えていた自由民権論者の元代議士武市安哉は男女二十数人を率いて新しい農村を作る意気込みでウラウスナイに来ました。監獄用地189万坪の払い下げ手続きを済ませ、キリスト教徒でしたので、翌年念願の教会堂を建設し、小学校にも兼用したのが、聖園小学校になり、後の浦臼小学校になりました。生徒は年毎に増加し、施設が充実してきました。大正2年には聖園尋常高等学校は教育成績が良好で空知教育会長から表彰されました。
入植者が増え、石狩川を渡っての日用品の買出しの不便に耐え切れずに、農場事務所に販売部を置き日用品を売るようになったのが浦臼村での荒物雑貨店の始まりです。
北光社社長として北見に行っていた坂本直寛が、明治30年に一家を挙げて聖園農場に移住してきましたので、強力な指導者を得ました。直寛は、坂本龍馬の兄の養子で、英学を志し、自由民権論者でしたが、明治18年ナックス牧師から洗礼を受けました。明治35年政界から宗教界へ転じ、北海道内の布教に努めましたが、44年、札幌北辰病院で胃がんのため亡くなりました。
その聖園農場が土居農場と改めました。入植者が多くなると複雑な問題が起きたためか、資金難ではないかと推測されます。
☆ ☆ ☆
参考資料
「浦臼町史」
浦臼町役場 大正8年
「浦臼町史」
浦臼町史編さん委員会 昭和42年
「北越殖民社関係資料目録」
北海道立図書館 昭和46年
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