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2017.09.14

『水を石油に変える人』

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山本一生『石油に変える人』文芸春秋、2017年。

海軍に石油に変える技術を売り込んだ人がいた。インチキだと反対する人がいる中、山本五十六は違っていた。山本らの立会いの下で実験が行われインチキだと分かったので、副題が「山本五十六、不覚の瞬間」。
この技術を開発した人の名は本多維富で詐欺師。それまで「藁から真綿(絹)」、陸軍に売り込んだ「海からガソリン」の2件は詐欺罪で裁判にかけられたが、詐欺だと証明が出来ずに無罪になった。
支那事変が勃発し、物不足で統制がはじまり、その中にガソリンも含まれていた。...
そのような中、新聞には「廃油からガソリン」「魚油からガソリン」「草からガソリン」の記事が載るようになり、詐欺師には追い風が吹いた。
本多には政治の黒幕や霊感の強い人等が近づいてきた。「からガソリン」の話には東洋化成がこの話に乗った。この頃、同社は奇妙な噂が流れて株価は暴落し経営的に苦境に立たされていた。昭和13年の暮が近づいたころ、山本五十六に話を持ちかけた人が2人いた。
インチキだと反対者がいる中、山本は実験を決意。
1回目の実験は成功したが、生成されたガソリンを検査した結果、市販のものだと判明した。
2回目の実験では本多は気分が悪くなり病院へ行くと医師から止められ、実験は中止となった。
3回目の実験は山本らそうそうたる顔ぶれが集まり大臣官邸で行う予定だったが、本多が暴漢に襲われ実験が出来なくて1日目は終わった。
2日目も本多は来なかった。
3日目、本多が来て実験を行い大成功になった。からガソリンが出来たのだ。立ち会った人の中で疑問を抱いた人がガソリン生成時に使う薬瓶をスケッチしていて、成功時に瓶1本増えているのが分かり、インチキが確認できた。
「藁から真綿」同様、「からガソリン」も手品だったのだ。
このような話に、政界、財界、軍部に身を置く人が信じるのだから、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。

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