「在日」を生きる
金時鐘、佐高信『「在日」を生きる ある詩人の闘争史』集英社新書、2018年。
『ザ・プロフェショナル仕事の流儀』で取り上げられていた一万円選書の『いわた書店』に行ったときに、レジの横に有って一番気になる本でした。書店には店主が選んだ本が置いてあります。お店はこじんまりとしていて、新書や文庫を中心に置いてある、庶民的な書店でした。
この本は、詩人の金時鐘氏と評論家の佐高信氏の対談です。...
「第1章 戦前回帰の起点」では、「戦争に負けて良かった」から本書は始まります。この言葉に金氏は複雑な思いがあります。日本統治下になった釜山で生まれた金氏は朝鮮語を使うのが禁じられていましたから、日本語で育ち、戦中は皇国少年でした。終戦を告げる玉音放送に泣いたと言っていました。戦争が終わってから朝鮮半島は日本の植民地だったと分かった。
戦後、済州島4・3事件が有って日本に住むようになった。日本に来て本を出版することになったけど、日本語で書いたら朝鮮総連から目を付けられて、10年間仕事が無かった。北朝鮮に帰る船が出たのですが、金正日のしている事を知って止めた。北朝鮮に帰った人は、資本主義にドッポリ漬かっているという理由で、変な苦労があった。金氏が帰ったら生きていなかったかもしれない。日本が戦争に勝っていたら、あの状態が続いただろうから、負けて良かったとは思うけど、感情は複雑。
金氏は、自分の目でものを見て、自分の頭で考えられなくしているものに嫌悪感を抱いています。自分の目や頭の背景には、それまでの経験がある。自分との格闘もしている。
金氏、イイわ。
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