水島宏明『母さんが死んだ』
水島宏明『母さんが死んだ 新装増補版』ひとなる書房、2014年
昭和62年1月、札幌市で子供3人を残してお母さんが自宅で亡くなりました。死因は餓死。このときSTV(札幌テレビ)でディレクターをしていた著者は、取材し制作した番組がギャラクシー賞など3賞を受賞し、平成2年に本を出版、平成26年に新装増補版が発売になった。
お母さんの名前は岡田恭子、享年39歳。子供からの連絡で近所のひとが行ったときは、電気こたつから上半身を出し、ふっくらとした体型はミイラのようになっていた。
中央区に住んでいたときは、働いていて生活費の不足分は生活保護を受けていた。家賃の節約をするために白石区の市営住宅に引っ越したが、生活保護は受けられなかった。
法律では生活保護を受けるのは国民の権利だとしているが、保護費抑制をし始めてからは申請の前に行われる相談段階で、困窮していても切っている実態が浮かび上がってきた。
「明るく豊かに見える消費社会。その砂上楼閣の薄皮一枚隔てたところで、貧困というがん細胞が国民を徐々に蝕んでいる。暮らしに不自由しない「中流」の家庭も、離婚や事故、病気や老いなどのきっかけ一つで、生活苦へと転げ落ちていく。行政が救おうとはせず、ますます増幅される貧困のひずみ。それが地方へ、母子家庭へ、老人へ、子供たちへ、と力の弱いところへ一気に押しよせている。」状況は、32年たった今も変わらないなと思った。
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