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本紹介

2018.06.01

『「その日暮らし」の人類学』

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小川さやか『「その日暮らし」の人類学』光文社新書、2016年

著者はタンザニアで長くフィールドワークをし、論文3本を書きました。本書は『小説宝石』に連載したものを加筆修正したものです。
タンザニア路上商人は、それぞれ独自の仕入れのルートがあるのです。それを新人に教えるんだから。
どうしてなのかはテレビで何かの番組を最後のようだけ見てた時に分かった。野生の感だわ。
おさるは自分だけが良い思いをしていると群れが崩壊するからしないんだって。

中国人、コピー商品を作って販売しているんだけど、薬には手を出さないんだって。
していいことと悪いことの最後の一線は引いているようです。

それにしてもタンザニアの人たち、パワーがあるわ。
ホントはみんな、明日をも知れない「その日暮らし」なんですよね。

2018.05.30

『政治と秋刀魚』

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ジェラルド・カーティス『政治と秋刀魚』日経BP社、2008年

古本屋さんを覗いていたらこの本のタイトルに惹かれて読んでみたいと思い購入しました。
著者は政治学者で日本の政治を研究して、受賞歴の中に旭日重光章があります。
始めて日本に来たのが前回の東京オリンピックの年で、以来アメリカと日本の往復をしています。...
日本人女性と結婚して二人の娘がいます。
本書は政治から日本社会を見ていて、分かりやすく書いてあるので、政治が苦手な私でも一気に読み進められました。
お子さんが小学生の頃、夏休みは毎年群馬県山間部の月夜野町で過ごし、現地の小学校が夏休みに入るまでの5~6週間は体験留学をしていました。その時の事を書いた箇所を引用します。

「娘の北小学校での体験の中から、読者の皆さんにぜひ知ってもらいたいことが一つある。なぜなら、これは日本人の価値観に関する非常に重要なことだからだ。娘たちが北小で一番驚いたことは、生徒が四つん這いになって床を磨いたりして、学校の清掃を手伝う事だった。これは日本では当たり前のことであるが、アメリカではそうではない。ある日、娘たちが帰ってきて、その日の役割がトイレの掃除だったと報告した。長靴を履いて手袋をはめて掃除をしたという。
 そういうことをさせられたら、嫌がるだろうと思う人はいるかもしれないが、決してそうではなかった。どちらかといえば、誇りをもって話してくれた。その事が今でも強く印象に残っている。そういうことをすることによって、娘たちはお世話になっている学校に対する責任を感じさせられたのではないかと思う。自分たちの学校を清掃する子どもは、学校内清掃が他の人の仕事だと思う子どもよりも遥かに学校自体をきれいにしょうという思いや、学校に対する尊敬の念が強いだろうと思う。このように学校を清掃するという行為は子供たちに、責任感や清潔感、そしてコミュニティのものを大切にすることなどを自然と教え込んでいるのである。」

著者は、日本の政治改革は外国の仕組みをそのまま持ってくるのではなくて、日本的なやり方にアレンジしなければうまくいかないと言う。もっと日本を知りたいと思いました。

「噺家ものがたり」

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村瀬健『噺家ものがたり』メディアワークス文庫、2018年。

就活をしている大学生が、会社の面接日に寝坊して、慌ててタクシーに乗ったところから話が始まります。
そのタクシーの中で流れていた落語を聞いて、大学を中退し、住まいを引き払い、ケータイを解約して、その落語家のもとに弟子入りをしました。
落語家の生活ですもの、笑いあり涙あり。...
笑いと涙と一緒になった時はワタクシのココロは戸惑います。
覚悟が決まるとキモが据わり、オーラとして出るんだね。

選挙戦が始まったころの新弟子と師匠の会話。

新弟子「投票に行くんですか」
師匠 「行くよ」
新弟子「どこに入れるんですか」
師匠「箱」

私も今後、どこに投票するか聞かれたら「箱」って答えよう。

ワタクシのこれからの人生は猫のように自由に生きて、こう言われるようになるのです。
「ばあさん、正気かい?」
おあとがよろしいようで。

2018.05.27

『人生を闘い抜く』

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山本由紀著/大嶋利佳構成『人生を闘い抜く』雙志館、2018年

  Fb上で大嶋さんが本を出版しますと本書の写真をアップしたのを見て、山本さんのお顔に心が揺さぶられましたので、購入をしました。
届いた本を見て泣けてきました。山本さんのお顔は私の心を穏やかに揺さぶります。

  山本さんは27歳で極真空手に入門し、結婚、子育てをしながら世界大会で優勝しました。  女性であること、遅くになって空手を始めたこと、子育てをしながら空手をしていること、世界大会では大けがをしたこと。。。さまざまな困難を乗り越えてきました。
  山本さんは暗闇の中から光を見出す人なんですね。
心が傷ついている人に寄り添う人なんですね。
  読んでいると二人の人の言葉が思い浮かんできました。
  一人はチベット仏教のダライ・ラマで、講演の最後は質問を受け付けているのですが、自分で探し求めることに関しては「I don`t know」を連発しています。
もう一人は娘がミュージカルの稽古をしていた時の先生で、「食いついていくのも才能」とおっしゃっていました。

  「生まれてきた意味なんて、ありませんから」の一言は目からうろこでした。
生まれてきた意味と人生の意味とは違うんですね。私は一緒にしていたから分からなかったんです。
自分の人生の意味を探ろうと思ったら、過去を振り返るといいのですね。
  私はカトリックで、洗礼を受けるときに洗礼名を決めます。家族のサポートばかりをしてきたので、お手伝いさんで聖人のノドブルガの名前を頂きましたが、それは何かの手段だと思いました。
これからは「人生の意味」を探っていきたいと思います。

  この本は、現実をしっかり受け止めて人生行路を歩んでいる人の応援歌ですね。
厳しい現実を目の前にして、うずくまっている人に指針を与えてくれます。「行けー、突き進めー」とげきを飛ばしませんから大丈夫ですよ。
今月発売になったばかりの本書を読み終え、適当な個所を開いて顔に近づけ、匂いをクンクンしながら、人生って愛おしいものだと思い、余韻に浸っていました。

2018.05.21

「在日」を生きる

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金時鐘、佐高信『「在日」を生きる ある詩人の闘争史』集英社新書、2018年。

『ザ・プロフェショナル仕事の流儀』で取り上げられていた一万円選書の『いわた書店』に行ったときに、レジの横に有って一番気になる本でした。書店には店主が選んだ本が置いてあります。お店はこじんまりとしていて、新書や文庫を中心に置いてある、庶民的な書店でした。

この本は、詩人の金時鐘氏と評論家の佐高信氏の対談です。...

「第1章 戦前回帰の起点」では、「戦争に負けて良かった」から本書は始まります。この言葉に金氏は複雑な思いがあります。日本統治下になった釜山で生まれた金氏は朝鮮語を使うのが禁じられていましたから、日本語で育ち、戦中は皇国少年でした。終戦を告げる玉音放送に泣いたと言っていました。戦争が終わってから朝鮮半島は日本の植民地だったと分かった。
戦後、済州島4・3事件が有って日本に住むようになった。日本に来て本を出版することになったけど、日本語で書いたら朝鮮総連から目を付けられて、10年間仕事が無かった。北朝鮮に帰る船が出たのですが、金正日のしている事を知って止めた。北朝鮮に帰った人は、資本主義にドッポリ漬かっているという理由で、変な苦労があった。金氏が帰ったら生きていなかったかもしれない。日本が戦争に勝っていたら、あの状態が続いただろうから、負けて良かったとは思うけど、感情は複雑。

金氏は、自分の目でものを見て、自分の頭で考えられなくしているものに嫌悪感を抱いています。自分の目や頭の背景には、それまでの経験がある。自分との格闘もしている。

金氏、イイわ。

2018.01.13

『「悪くあれ!」窒息ニッポン、自由に生きる思考法』

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モーリー・ロバートソン『「悪くあれ!」窒息ニッポン、自由に生きる思考法』スモール出版、2017年。
著者は父がアメリカ人、母が日本人で、日本とアメリカの両方の教育を受けました。
今はジャーナリストをしています。
アメリカで生まれて、父の仕事の都合で日本に来て日本の学校に通いました。
父が日本での仕事が終わりましたので、一緒にアメリカに行きましたが、日本で当たり前のことがアメリカでは否定されます。
両親の離婚により、母と一緒に日本に来ますが、アメリカで当たり前のことが日本では否定されます。
高校生の時にバンク音楽に目覚めてバンド活動をしますが、猛勉強をした結果東京大学とハーバード大学を同時合格。東京大学を半年で退学しハーバード大学に行き、音楽の勉強をしました。
自由な思考になるためには、後戻りできない感動が必要だと著者は言っています。
「後戻りできない感動」って、言い換えれば「自分の価値観の基になっている根本的な事がゆらぐ衝撃」ではないでしょうか。

2017.09.14

『ざんねんないきもの事典』

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今泉忠明監修『続ざんねんないきもの事典』高橋書店、発行年は記載なし、児童書。

生き物は自然界で生き残るために進化をしていますので、こうなりたいと思ってもその通りに進化しませ。ですから、私が頭がよくなりたいと願っていても、残念ながら、その通りに進化するのは望めないです
例えばラッコの場合、あおむけになって貝を石に打ちつけて殻を割り、実を食べるのですが、この石はお気に入りのを持っています。万が一なくした時は、お気に入りを見つけるまでご飯は食べられませ。ご飯が食べられない時期があっても生きて行けます。
かむ力の強いワニですが、口を開ける力は弱いので、おじいちゃでも片手で抑え込めるです。少ない握力でワニに勝てるのですから、大丈夫。
リスは越冬のためにドングリを埋めますが、残念なことにその半数はどこに埋めたか分からなくなるのです。半分忘れても生きて行けます。
このように、ちょっと残念な生き物の話を多数読でいると、なぜか生きて行くのに自信がつくのです。
ゴリラの会話「ゴホッ、ゴホッ」ってゲップなんだって!ということは、ゴリラと会話ができるK大総長はゲップの達人って事かしら?
ざんねんないきもの」は株式会社高橋書店の登録商標ですので、利用の際は十分気を付けて!

『のほほん解剖生理学』

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玉先生『のほほん解剖生理学』株式会社永岡書店、発行年の記載なし。

どんなふうに作られているかが解剖学で、どんなふうに働いているかが生理学です。この本は解剖生理学を大阪のノリで面白く、ザックリと解説しています。
例えばホルモンの冒頭は「体へ指示する物質がホルモンな。あの肉とかのホルモンは「捨てる事=放るもん」から来てて違うんやで!英語の「hormone」説もある!」という具合です。
頭蓋骨はいくつもの骨がくっついて出来ているから、「頭痛の時、頭が割れるように痛いって言うけど、本当に割れてるねん」と、こんな具合に解説がついています。
頸椎の数は人間とキリンは同じで7個とか雑学も交えながら、カラーの図解で説明しています。
苦手な医系ですが、ハードルが低くなる本です。

『水を石油に変える人』

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山本一生『石油に変える人』文芸春秋、2017年。

海軍に石油に変える技術を売り込んだ人がいた。インチキだと反対する人がいる中、山本五十六は違っていた。山本らの立会いの下で実験が行われインチキだと分かったので、副題が「山本五十六、不覚の瞬間」。
この技術を開発した人の名は本多維富で詐欺師。それまで「藁から真綿(絹)」、陸軍に売り込んだ「海からガソリン」の2件は詐欺罪で裁判にかけられたが、詐欺だと証明が出来ずに無罪になった。
支那事変が勃発し、物不足で統制がはじまり、その中にガソリンも含まれていた。...
そのような中、新聞には「廃油からガソリン」「魚油からガソリン」「草からガソリン」の記事が載るようになり、詐欺師には追い風が吹いた。
本多には政治の黒幕や霊感の強い人等が近づいてきた。「からガソリン」の話には東洋化成がこの話に乗った。この頃、同社は奇妙な噂が流れて株価は暴落し経営的に苦境に立たされていた。昭和13年の暮が近づいたころ、山本五十六に話を持ちかけた人が2人いた。
インチキだと反対者がいる中、山本は実験を決意。
1回目の実験は成功したが、生成されたガソリンを検査した結果、市販のものだと判明した。
2回目の実験では本多は気分が悪くなり病院へ行くと医師から止められ、実験は中止となった。
3回目の実験は山本らそうそうたる顔ぶれが集まり大臣官邸で行う予定だったが、本多が暴漢に襲われ実験が出来なくて1日目は終わった。
2日目も本多は来なかった。
3日目、本多が来て実験を行い大成功になった。からガソリンが出来たのだ。立ち会った人の中で疑問を抱いた人がガソリン生成時に使う薬瓶をスケッチしていて、成功時に瓶1本増えているのが分かり、インチキが確認できた。
「藁から真綿」同様、「からガソリン」も手品だったのだ。
このような話に、政界、財界、軍部に身を置く人が信じるのだから、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。

『もっとヘンな論文』

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サンキュータツオ『もっとヘンな論文』角川書店、2017年

著者のサンキュータツオ氏は大学で日本語学を教える芸人学者。自身の研究領域の論文を読むのに疲れて、他の分野の論文を読んでいたら、面白い論文を見つけて、2年前に出版した「ヘン論文」の続編です。
始めにの最後で「断言します。論文は、笑えるものほど素晴らしい!よくぞここまでやった、と。今回も珠玉の論文をご紹介します」と書いてある通り、「プロ野球選手と結婚する方法」始め、11本の名(?)論文を紹介しています。
卒論から雑誌に掲載された論文で、著者は、論文をまじめに解説して面白く突っ込みます。
身近な事象に疑問を抱いて研究する大切さ、研究の苦しさにも触れていて、卒論や修論に取り組んでいる人にはお勧めだと思います。